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僕の身体の周りに切取線があれば良いのに。山折り谷折り糊代と子供雑誌の付録の様に。遊んで貰って飽きたらゴミ箱、燃えるゴミに分別されてさ、燃えに燃えたらこの世とおさらば、二度と会うこともありますまい。代わりは毎月替わりで子供雑誌についてきて、みんながみんな同じ結末を辿るんだ。

二度と離さない、と抱き締められた女が涙ながらに頷き、広い背中を抱き返す。固く結ばれた彼らを引き裂くものは、距離、気の移り、運命、そのいずれにも当て嵌まらない。愛し合う男女を世に生み出した天使であり、彼等の仲を引き裂く悪魔をも兼任している、物語の筆者である他でも無い僕だ。

聞きたくも無い噂話が漏斗で僕の耳に注がれる。鼓膜の辺りは此方の悪口でたぷたぷと溢れ、注がれ続ける静かな罵り以外の物は聞き取れなくなる。漏斗をこの耳に当てがう者は幻で、罵りを選び込んで此処に注いでいるのもそう。譫妄対策の薬はもう空シート。歪曲した生活空間に救いは無いのか。

泥土へ緩慢に足を取られ、沈んでゆく様な微睡みの中にて幻影を見た。荊棘がこの手を、この足を、この頭を縛ろうとする幻影を。殊に頭への締め付けは酷く、唸りを上げる程で。思わず双眸を開くも荊棘の姿は無し。だが悪い夢だったとするには、額から一雫落ちた血液がその判断を強く拒んだ。

流星群の夜、君は指で軌跡を辿りながら「流れ星に頼めば願いは叶うなんて嘘だよね」と不器用な笑みを湛えた。徐に僕の左手を取り「貴方が私を好きになってくれる様に何度もお願いしたのに」彼女は僕の薬指に飾ったリングをなぞって睫毛を伏せた。そんな君にときめいたなんて、よもや言えまい。

苦悩を消してよイレイサー
力は入れ過ぎないように
薄っぺらいプライドがぐしゃぐしゃになっちまうぜ
痛みを消してよイレイサー
僕の中身は消しカスだらけ
くだらないプライドは滅茶苦茶になっちまった
助けて欲しい≠ネんて言ってたまるか
いつも心にイレイサー
あいつにやられた落書き 消してやる

君が最後にくれた「さよなら」は割れ硝子の破片さながらに僕の胸に刺さり、埋まり、深くに至って取り出せなくなってしまった。夜が明けてもまた夜が来ても、その破片は聴覚にあの声を呼び戻す。別れの言葉がこんなにも残る物となったのは初めてだ。ただ一人が僕の人生から離れただけなのに。

空調が低く吠える他には己の呼吸と冷蔵庫の痺れた唸りのみ。硝子製灰皿はテーブルとの微かな摩擦で鋭くも不快な鳴きを上げた。箱から選び出された一本の煙草は得意気にくすくす笑っている。ライターの着火が金属の硬さを示した後、小さく点る炎に炙られた細筒の先端は僕と共に甘美なる溜息を漏らした。

夢から醒めれば毎日我が身は泥人形に戻りわ碌に動けなければ頭も働かず。怠けか低血圧か肉体的鬱、いづれが原因なのかは知れず。泥の足跡を残し冷蔵庫へ、冷やい珈琲を一口、そして朝の錠剤を三種、処置は其他諸々。人間擬態の手順は実に面倒。今日の泥は溶け難い、果たして人間に成れるのか。

夢から醒めれば毎日我が身は泥人形に戻りわ碌に動けなければ頭も働かず。怠けか低血圧か肉体的鬱、いづれが原因なのかは知れず。泥の足跡を残し冷蔵庫へ、冷やい珈琲を一口、そして朝の錠剤を三種、処置は其他諸々。人間擬態の手順は実に面倒。今日の泥は溶け難い、果たして人間に成れるのか。

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